起きて半畳寝て一畳も最近は窮屈でたまらんわ!畳のサイズの変遷
「起きて半畳寝て一畳」ということわざがあります。
ほとんどの人はその意味をご存知でしょうが、言い得て妙というか、なかなか意味深で鋭い名言だと思います。
念のため意味を記すと…
まぁ、字面通りにとれば、起きてるときは畳半畳のスペースがあればよく、寝ても一畳あれば足りるだろう、というところ。
で、その指し示す意味は…
まぁ、生きてくのにそんだけの広さで事足りるのだから(もちろんこれは比喩)、贅沢は慎むべきだとか、必要以上の豊かさを求めるのはよしとけ、みたいな感じ。
高望みして頑張りすぎてもよくないんじゃね?ってなところでしょうか。
さて、この言葉のネックになっている「半畳・一畳」ですが、時代と共にどんどん窮屈になっているのにお気づきですか?
そうです、今日の話題はことわざの意味なんかではなく、畳のサイズのお話。
関東の畳と関西の畳の違いもわかります。
関西の畳は基本的に京間
最近は畳の部屋がない間取りも増えてきましたね。
とくに都市部のマンションなんかではそういった傾向が顕著です。
ゆったりめの間取りの場合に「Tatami Room」なんて表記で、洋間の一角に四畳半ほどの和空間を演出している例もありますが、一般的なファミリータイプだと和室の人気はイマイチなので、全て洋間というケースがほとんどでしょう。
少なくとも東京近郊ではそうです。
畳は日本人の心のふるさとというか、これはこれで風情があって実にいいものですが、生活の欧米化と使い勝手という部分で新しい建物ほど和室が減っています。
ところで、畳の歴史は古く、使われだしたのは平安時代です。ただ、当時はサイズもまちまちだったといいます。
そのまちまちのサイズが統一されたのが平安京の造営時。平安京の一画を6等分にした寸法を基準に定められました。
それがいわゆる「京間」、基本的には関西における畳のスタンダードサイズです。
大きさは191センチ×95.5センチ。
関東の畳は基本的に江戸間
関西の畳は先述の「京間」がベースになっていますが、関東はというと「江戸間」が基本です。田舎間ともいいますが、江戸間の方が一般的でしょう。
その江戸間ですが、生まれたのは名前の通り江戸時代です。
徳川幕府になってから、太平の世が続き、今の東京ほどではないにしろ江戸に人口が集中しました。
そうすると家屋の需要は高まるばかりです。
そこで、できるだけ早く家が建てられるように柱と柱の間の寸法が統一されました。
何でもそうですが、規格は揃っていた方が効率がいいというわけです。
で、そこにピッタリはまるように畳のサイズも新たに決められたのですが、それが「江戸間」です。
大きさは176センチ×88センチ。
それまでの京間に比べて縦が15センチ、横が7.5センチ小さくなっています。
このサイズで一般的な六畳間を考えてみると、京間の部屋なら概ね五畳になり、だいぶ小さくなったのがわかりますね。
江戸間でも京間でもない畳
ちなみに、江戸間と京間は関東と関西のスタンダードな畳です。
ところが、畳に限りませんが、関東と関西とはまた別の独特の文化が生まれる地域がありますよね?
そう、名古屋です。
名古屋を中心とした中京地区の畳は、「中京間」といって江戸間とも京間とも違います。
大きさは182センチ×91センチ。
サイズ的には江戸間と京間の中間になりますね。
位置している場所も中間、畳のサイズも中間、畳の名前「中京間」の真ん中の「京」という字を取ったら中間(これはダジャレ)、さすが名古屋だなって思いませんか?
独特の文化は畳のサイズにも表れています。
さて、ここまでは畳のスタンダードな大きさについて記してきましたが、どうも現実とはそぐわないと感じている向きもおいででしょう。
「いや、うちの畳、もっと小さいから」みたいな。
そうなんです、最近の畳はもっとずっと小さいのが主流です。
「団地間サイズ」なんていいましてね、もう昔のように大きな畳は年季の入った昔ながらのお宅でしか見られなくなりました。
団地サイズというくらいですから、高度成長期に立てられたいわゆる団地や、その後のマンション、また戸建てでも建売なんかはみんな小さな畳です。
団塊の世代なんていいますが、終戦後の第一次ベビーブームで急速に人口が増加して都市部に集中したのは「江戸間」が生まれた背景にも似ています。
建物の専有面積は軒並み小さくなり、必然的に畳も小さくなったというわけです。
先ほど、江戸間の六畳は京間の五畳なんて書きましたが、今の六畳はその小さな方の江戸間の五畳もあるかないか… なんてことも。
建物の広さは平方メートルで表記されることが多いので、畳の大きさなんて忘れ去られた印象です。それと同時に「何坪」という言い方も減ってきましたね。
一坪は二畳で3.3平方メートルがまぁ一般的でしたが、この論法だと畳が小さくなれば一坪も小さくなるので、平方メートル表記の方がより正しいということになるでしょう。
と、このように、畳は時代を経るごとに小さくなってきました。
その間、日本人の平均身長は伸びているというのに、居住空間の礎であった畳は小さくなり続けているという現実。
どう感じますか?
まとめ
さて、畳は時代と共に小さくなったけれども、まず畳自体が減ってきましたね。
どうです? お宅に畳の部屋はありますか?
畳の部屋がない家で育った世代は、よほどのことがない限り、自分のマイホームにも畳を求めないでしょう。
ひょっとすると今後は、畳は旅館や和食のお店の座敷くらいでしかお目にかかれない存在になってしまうのかもしれませんね。
そうすると、当然のことながら「起きて半畳寝て一畳」の意味も身をもって知ることがなくなります。
なにしろ和室で寝たことがなければ「寝て一畳」が分かりませんから。
将来的にこの「起きて半畳寝て一畳」ですが、違った解釈も生まれるかもしれないと思いませんか?
「起きてる間は半畳でよく、寝るときも一畳で足りる」なんて狭苦しい縮こまった生活をしていると、「大きな人間は育たない」みたいな…。
あるいは、畳が小さすぎてそんな暮らしはできっこないことから「無茶な生活を送ること」なんて解釈が生まれたらどうしましょう…。
そんなアホな心配をしている今日この頃です。
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