プライベートブランドはなぜ安い?あなたが知りたいPBの全て
最近よくプライベートブランドの商品を見かけませんか?
「PB」とも呼ばれますが、スーパーやコンビニといった小売業者が企画・立案し、メーカーである製造業者に依頼して作ってもらって、自社ブランドとして販売している商品・商標です。
有名なところだと、セブンイレブンやイトーヨーカドーなどを経営するセブンアンドアイホールディングスの「セブンプレミアム」、イオンの「トップバリュ」、西友の「みなさまのお墨付き」、私鉄系スーパーが扱う「Vマーク(バリュープラス)」、ローソンの「バリューライン」、ファミマの「ファミリーマートコレクション」などなど。
プライベートブランドで売られている商品は、どの商品もほぼ同様のものがメーカーからも発売されています。
でも、なぜかプライベートブランドの方が安い…。
どうしてか気になりませんか?
プライベートブランドが安いわけ
プライベートブランド(PB)に対して、いわゆるメーカーの商品・商標をナショナルブランド(NB)といいます。
食品だったら、まぁ色々ありますが、山崎パンとかハウス食品とかヤマサ醤油とか、そういったよく見かけるメーカーの商品及び商標です。
ざっくり言うと、こういうメーカー製がナショナルブランドです。
では、少々流通の話をしましょう。とは言っても小難しい話はしません。
ナショナルブランドはメーカーである製造業者から問屋等を通して小売店に卸されます。これは容易に想像つきますよね。
で、次が大事なんですが、小売店に卸された商品は100%売れるか?といえば必ず売れ残りが出て、売れ残った商品はどうなるか? といえば、基本的にメーカーに返品されるんです。
小売店が仮に100ケース仕入れて、半分しか売れなかったとしたら、残った半分の50ケースはメーカーに返品され、その輸送費もメーカー持ちです。
これだとメーカーはなかなかのリスクをしょい込んで販売してるような気がしますよね。だって返品の際の輸送費まで負担するのですから。
ところが、そういったリスクは金銭に置き換えられ、小売価格に乗せられているんです。
つまり、消費者は購入してあげたのに、返品にかかる輸送代まで負担させられているわけです。
これに対して、プライベートブランドは売れ残っても返品されることはなく、小売店の100%買取になります。
問屋等も通さずメーカー直で小売店に納品されて店頭に並び、宣伝等もされることはありません。だから販売力のある小売店しかできないワザです。
中間マージンもなく、広告宣伝費もなく、返品にかかる費用もないので、それが小売価格に反映されて、メーカー品より安く店頭に並びます。
まぁ、冒頭の通り、その商品自体が小売店の企画・立案に基づいて開発されたものなので、いわば特注品のようなもの。
小売店には製造するノウハウも設備もないのでメーカーに依頼して作ってもらい、小売店は自社ブランドとして販売するわけなので、メーカーがリスクを負う要素も考えてみればないわけです。
だったら、可能な限りすべての商品をプライベートブランドにすれば何でも安くなるんじゃないの?
といった考え方も出てきますよね?
事実、そういった例も海外では見られます。
ヨーロッパではスーパーに並ぶ品物の60%がすでにプライベートブランドなんていう例もあります。
モノの値段を決めてる主役の変遷
物々交換が主流だった大昔と違って貨幣経済になってから、物の流れは、作る人 → 売る人 → 買う人となりました。
これはつまり、製造業者 → 小売店 → 消費者で、これがいわゆる流通です。
流通するモノの値段は、買いたい人がどれだけいて、それに対してどれだけ行き渡るようにモノを提供できるかによって決まります。
モノが少なければ、買いたい人全てに行き渡るのは難しいので価格は上がります。
対して、買いたい人すべてに行き渡っても、なおモノが余っていれば価格は下がります。
こんなのは小学校の社会で習うようなレベルの簡単な経済の構造で、いれゆる需要と供給ですね。
先の大戦後の日本は、極端な物不足に陥り、需要に対して極端な供給不足でした。
そうすると、モノを作る人、つまり製造業者が圧倒的に力を持ち、本来は需給関係で決まるべきモノの価格を製造業者が決められるという、経済としては異例の事態になりました。
ところがご存知のように、日本の復興のスピードには目を見張るものがあり、たちまち高度成長期が訪れ、製造業主体の経済構造にも変化が現れます。
それを先導したのが冷蔵庫の大型化と自動車の大衆化でした。
その結果、小売業のスタイルが変わっていくのです。
それまでの日常的な買い物といえば、夕食を作るのにお肉はお肉屋さん、お魚はお魚屋さん、お野菜は八百屋さんと、誰もが複数の専門店を回って、その日に必要なものを買い求めました。
ところが、先述の冷蔵庫が大型化したことにより、家庭内にストックできる量が増え、日々買い物をする必要がなくなります。
併せて自動車の大衆化により、近所の店じゃなく少し離れた店でもモノが買えるようになってきます。
こうなると、スーパーマーケットの登場は必然ともいえるものでした。
スーパーマーケットはワンストップです。ワンストップとは一か所で全て解決するという意味です。
つまり、スーパーに行けば、今までお肉屋さん・お魚屋さん・八百屋さんと足を運んで買っていた食品がすべて、そこ一か所で済んでしまう。
そればかりではなく、日用品さえも揃っていて、便利この上ない。
このようにしてスーパーは人気を集めていきますが、冷蔵庫が大型化したことで各家庭のストック量が増え、自動車の普及で遠くのスーパーに買い出しに行ける。
そうすると、いつしか週に1~2回とか週末に1回スーパーでまとめ買いをするといった生活様式が当たり前になっていきます。
家庭の台所を支えているのは、専門店からスーパーマーケットにとってかわり、スーパーマーケットはその優れた集客力で力を持つようになります。
そうすると、もはや、モノの値段を決めるのが製造業などということはなくなり、より需要と供給を間近で見られる小売業がモノの価格を決める主役になっていきました。
製造業・小売業の思惑が一致したプライベートブランド
前章はちょっとプライベートブランドの話からそれてしまいましたね。
要約すると・・・
1.
先の大戦で極端にモノ不足に陥り需給関係が崩れた。
2.
その結果、圧倒的に需要が強くなったことで、製造業が価格決定権を持つようになった。
3.
しかし、世の中の変化により、製造業から小売業に価格決定権が移っていった。
みたいな話です。
かなりざっくりしている部分もありますが、経済や歴史の勉強ではありませんのでその辺はご愛嬌ということで(笑)
その後、日本経済はバブル期まで駆け上り、バブルがはじけてストンと落っこち、また昇りつつあるというような状況でしょう。
好況・不況と色々経験し、バブルの崩壊で地獄も見、製造業も小売業も多くを学んできたし、時流についていけない企業は淘汰されました。
その間、製造業は、オートメーション化、 IT化、ロボット化といった様々な技術改革・発展により商品の大量生産が可能に。
大量生産できるようになったのはいいのですが、ある意味生産能力を持て余している感もあります。
小売業は消費者の多様なニーズに応えるべくマーケティングに力を注ぎ、また同業態との差別化及びあくなき利潤追求のため自社ブランドの開発を急ぎます。
そうした思惑が一致した「プライベートブランド」は、製造業、小売業にとって、当然行き着くべき選択肢だったのでしょう。
なにしろ、生産能力を持て余した製造業と、自社ブランドを持ちたくても生産する術を持たない小売業です。
ある意味「渡りに船」といった印象もあります。
そうしてプライベートブランドは、今や隆盛を極めているというわけです。
プライベートブランドのメリット・デメリット
さて、流通の主役、消費者にとってプライベートブランドにはどういった魅力あるいはメリットがあるのでしょう。
そして、流通を支える製造業・小売業にとってのプライベートブランドとは。
最後に、それぞれ三者三様のメリット・デメリットをまとめてみましょう。
【 メリット 】
・消費者
消費者にとってプライベートブランドの何よりのメリットは、ナショナルブランドとほぼ同品質の製品をより安く購入できることでしょう。
これこそが、プライベートブランドの存在意義とさえいえそうです。
また、プライベートブランドは、ナショナルブランドにはない付加価値があったりします。
小売業が企画・立案している商品なので、より消費者に近い目線から、痒い所に手が届くといった商品も散見され、ときにナショナルブランドより高品質なものも見受けられます。
・製造業
製造業においては、返品なしの買取で一定量の販売が確約されることから売り上げが安定するのみならず、閑散期でも工場の稼働率を上げて効率よく生産できるのでコスト削減につながるというメリットがあります。
・小売業
小売業においては、商品の原材料・製造方法・仕様を自社の判断で容易に変更できるため、販売現場及び消費者の声を商品に直接反映させられるのみならず、価格の設定も自由に決められるというメリットがあります。
【 デメリット 】
・消費者
プライベートブランドの商品には必ず同等のナショナルブランドの商品があります。
ほぼ同じなら少しでも安い方に魅力を感じるのは消費者の性(さが)ですが、ちょっと待ってください。
プライベートブランドの商品の中には同じに見えても、実は原材料や配合比率・加工方法・内容量を変えている場合があるんです。
そのため風味・食感が違ったり、内容量が微妙に少ない場合など値段が安くても価格相応もしくは割高といったケースもあり得ます。
また、小売店は自社ブランドであるプライベートブランド商品を優先して取り扱うことがあり、そのためナショナルブランド商品の取り扱いが減って、商品の選択肢が狭められることも。
さらに、プライベートブランドは安い分、特売品になることもありません。(一部、賞味期限・消費期限が迫ったものを除く)
・製造業
製造業においては、並行生産しているナショナルブランド商品の売り上げが減少する懸念があるうえ、商品によっては自社のナショナルブランド商品より利益が大幅に低いことも。
また、製造した商品が指示された規格と誤差が生じた場合、受け取り拒否されるリスクがあります。その場合、受注生産品ということもあり、そもそもの規格がナショナルブランドのものと違うため、使いまわしも出来ず資金繰りが苦しくなるケースも想定できます。
・小売業
小売業においては、全量買い取りのため、売れ残りが出てもナショナルブランドのように返品することはできないし、プライベートブランドゆえに他社に転売することもできません。
また、製造業者に追加注文のタイミングを誤ると、長期間品切れという事態が生じ、在庫管理の難しさに常にさらされます。
さらに、何か商品に問題あった際、クレームを含め、対応は全て自社で行う必要があります。
まとめ
今やすべてのコンビニと、多くのスーパーにプライベートブランドの商品が並んでいます。
どの商品もよく研究されていて、ナショナルブランド商品に引けを取らない、もしくはむしろいいなんて場合もありますね。
基本的にプライベートブランドの商品はどこが作っているかについて、原則非公開です。
しかし、法令で製造者の記載が義務づけられている酒類・乳製品などといった商品や、プライベートブランドの独自の方針で公開している場合は記載されています。
これには、製造メーカーが判ることで、消費者の安心感・お買い得感が増幅する効果があるようです。
ちなみに、私の家の近所に最近新しくローソンが出来ました。
プレオープンで先着200名に食パンをくれるというので、ミーハーな私は出かけて行き、見事食パンをゲット(笑)
食パンはローソンのプライベートブランドでしたが、製造は山崎パンでした。
そして、何気に商品棚に並んでいたプライベートブランドの味ぽんの製造元はヤマサ醤油でした。隣にミツカンの味ぽんも並んでいましたが。
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