最近、頭に「お」が付く尊敬語と「サ入れ言葉」がおかしいぞ!?
尊敬語はだいたい頭に「お」を付けますよね?
(中には「お」ではなく「ご」のものも…)
でも、何にでも「お」を付ければいいってものではありません。
正しい「お」の付け方と、誤った「お」の付け方を区別し、正しい使い方をマスターしたいものです。
また、「サ入れ言葉」ってのがありまして、これまた使い方がおかしいですよね。
これも知らず知らず使ってしまいがちなので、なぜ変なのかを理解して、誤った使い方は避けたいものです。
「お」を付けただけでは尊敬語にならない!?
相手の動作や状態、あるいは持ち物や所有物に対して尊敬の意を表すのがいわゆる尊敬語です。
しかし、何でもかんでも言葉の頭に「お」を付けるだけで尊敬語になると思っている人がいますがそれは間違いです。
例えば、食事は名詞なので「お食事」で問題ありませんが、「食べる」は動詞なので「お食べになる」というのは誤りで、正しくは「召し上がる」です。
同じように動詞である「見る」は「お見になる」などと言うはずもなく「ご覧になる」だし、「来る」は「いらっしゃる」と変化します。
「言う」も同じように「言われる」ではなく「おっしゃる」となります。
もちろん「お」+「~になる」で尊敬語になる動詞も少なくありません。
「お聞きになる」「お話しになる」「お思いになる」などは、単純に頭に「お」を付けて成り立ちます。
こうしてみると、名詞よりも動詞の方が難しい気がしますね。
名詞については法則性があって比較的迷うことが少ないと思います。
名詞の場合、外来語・公共物・動植物・自然(現象)には「お」を付けません。
例えば、外来語。
訪問したお宅のインテリアが素敵だからと言って「おインテリアが素敵ですわね」なんて言わないし、そこで出されたケーキが美味しくても「このおケーキ、とっても美味しいわ」なんて言いません。
一部例外的に、「おビール」「おトイレ」などは接客業では一般的ですが本来はNGです。
続いて公共物。
「お役所」が代表的ですが、これはある意味「嫌味」なニュアンスが込められています。
他にも図書館・公民館・学校・道路などたくさんありますが、どれも「お」を付けたらおかしいのは一目瞭然です。
続いて動植物。
「お宅のお犬ちゃん、可愛いですね」とは言いません。まぁ普通は「お宅のワンちゃん、可愛いですね」になるでしょう。
同様に猫だって「お」を付けて言うことはありません。
訪れたお宅の庭をほめる時だって、「お宅のお庭は大変素敵ですね」というのは庭が植物ではないからいいのであって、その庭の中の一つ一つの構成要素、例えば松の木を褒めるのに「お松」、梅の木を褒めるのに「お梅」などと言ったら、時代劇の登場人物のようになってしまいます。
続いて自然(現象)。
もうそろそろ例を挙げるまでもありませんが、「先日のお地震では被害に遭われませんでしたか?」同様に「お台風の中、お越しいただきありがとうございます。」なんて言いませんよね?
これでは地震や台風に敬意を表しているようなものですから。
このように、名詞の場合、外来語・公共物・動植物・自然(現象)には「お」を付けないと覚えておけば間違いも減るでしょう。
ところで、先ほどの動物のところで、犬に「お」を付けないと書きましたが、例外がありましたね。
それは江戸時代の「お犬様」です。
まぁ、これは全然別な話だし、この場合は犬に敬意を払っているのであながち間違いでもないのかも… ですが。
話はちょっと脱線しますが、この「お犬様」という制度、徳川幕府第五代将軍・綱吉による「悪政」として有名ですが、一説によると、悪政ではなかったという話もあります。
当時の江戸には野良犬が多くて、ゴミを荒らし、人を噛み、時には子供を噛み殺すなんてこともあったのだとか。
見かねた綱吉は「御囲(おかこい)」と呼ばれる犬専用の施設を江戸近郊に開設し、そこに犬を集めたそうな。
これが犬を過剰に保護しているように世間の人々の目には映り、「犬公方」との揶揄と共に、悪政として語り継がれているのだとか。
閑話休題
続いて「サ入れ言葉」の妙な点に移りましょう。
サ入れ言葉とは?
そもそも「サ入れ言葉」って何でしょうね?
代表的な例として、新幹線の車内改札。「乗車券を拝見させていただきます」ってあれです。
「させていただく」は、「する」の使役「せる」に「さ」をつけ、「もらう」の謙遜語「いただく」を付けたもので、完全に過剰な敬語表現です。
(使役(しえき)とは、「~させる」という表現形態を指す文法上の概念です)
この場合、「乗車券を拝見させていただきます」ではなく、「乗車券を拝見します」で十分へりくだっているので、乗客に対して失礼にあたりません。
また、よく司会者が「ではそろそろ始めさせていただきます」という言い回しをするのを聞いたことはありませんか?
これも「ではそろそろ開始いたします」で謙譲表現になっています。
正しい日本語の使い方という意味では、「させていただく」は相手または第三者の許可を受けて行う行為、またはそのことで相手から恩恵を受けるという気持ちがある場合に使われる表現なんですね。
そう聞くと、車内改札は乗客の許可を得て(協力を得て)行うから「させていただく」でいいのでは?
あるいは、司会者にしても集まった客や聴衆といった人たちの許可を得て開始するのでは?
といった疑問も生まれそうですが、新幹線の車掌は業務なので乗客の許可は要さないし(ただし乗客の協力は必要)、司会者は進行役なのでオーディエンスの許可は必要ないので、やはり「させていただく」は不適切ということになります。
この「サ入れ言葉」、案外難しいですが、日本語としては正しくないので、気を付けたいものです。
まとめ
先日もこちらで変な日本語を取り上げましたが、できれば誤った使い方はしたくないものです。
国語学者でも何でもありませんし、むしろ自分自身、稚拙な日本語を使っており、こうして書いてる文章も変ですが(笑)、できればきれいで正しい日本語を使いたいものです。
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