ねぇ知ってた?実はコレステロールに善玉も悪玉もないって!?
日本人の死亡原因の上位を占めるのは、がん・心筋梗塞・脳卒中。
これらは割と広く知られており、また、よく保険のパンフレットなどにも書いてあるのでご存知の方も多いでしょう。
そして、この三大疾病のうち、心筋梗塞、脳卒中の原因とされているのがコレステロール。
以前はコレステロール=悪という一元的な感覚でとらえられていましたが、最近はそのコレステロールにも「善玉」と「悪玉」があって、悪玉を減らして善玉を増やすことで健康増進になるなんてことが言われています。
事実、そういったコンセプトの健康食品も売られていることから、善玉はもてはやされ、悪玉は忌み嫌われるみたいな風潮ですが、これって本当なのでしょうか?
案外広告に踊らされているだけだったりしないのかしら?なんて懐疑的になっている私です。
人間が生きていくうえでコレステロールは必要不可欠
コレステロールの良し悪しを論じる前に、そもそもコレステロールとはいったいなんぞや?ということで、ちょっとコレステロールについて調べてみましょう。
人間の体は、ご存知のように無数の細胞が集まってできています。
そしてそれらの細胞は、一定の周期で古いものから新しいものに絶えず作り替えられています。
一例として、よくお肌のターンオーバーなんて言葉も耳にしますが、皮膚の細胞だったら、その生まれ変わりの周期は概ね4週間です。
ただ、細胞の生まれ変わりは、なにも目に見える表面だけではなく、体の内外問わず全ての細胞が一定の周期で絶えず生まれ変わり、そうやって人間は生きているのです。
さて、何でもそうですが、部品の修復・交換には新しい材料が必要です。
人間の細胞もその例に漏れず、細胞が生まれ変わるには、材料となる成分を常に用意しておく必要があります。
その新しい材料・成分、つまり細胞を作るために不可欠な物質がコレステロールなのです。
コレステロールが不足すると、人は正しく細胞を作ることができなくなり、その結果できあがった弱い細胞はがんになりやすいと言われます。
つまり、こうしてみると、コレステロールは人が生きていくために不可欠なものだということが分かります。
また、これだけではなく、コレステロールは紫外線を浴びることで、カルシウムの摂取に必要なビタミンDを生成するための「前駆体」という物質に変化します。
つまり、コレステロールが少ないと、結果としてカルシウムが不足して骨が弱くなってしまう恐れもでてくるんです。
ややこしい記述はさて置いて、ここではコレステロールは決して悪いものじゃないと、認識を改めたいと思います。
悪いものどころか、人が生きていくうえで必要不可欠なものだということを押さえておきましょう。
コレステロールに善玉も悪玉もない
前章でコレステロールに対する偏見は一つ消えたと思います。
この章では、更にもう一つコレステロールに対する誤解を解いておきましょう。
それは・・・
コレステロールに善玉も悪玉もない! ということです。
最近は、善玉のコレステロールとか悪玉のコレステロールという言われ方をよく耳にするので、善玉も悪玉もないなんて言われても俄かに信じがたいでしょうが、本当です。
というより、そもそもコレステロールは一つなんです。
ではなぜ、善玉と悪玉、二つあるように言われるのか…。
また、重要な存在にもかかわらず、なぜ病気の原因として目の敵にされるのか?
その辺について見ていきましょう。
細胞を作るために必要なコレステロールは、肝臓から血液中を流れて全身の必要な箇所に送り届けられます。
この時、コレステロールは「リボタンパク」というタンパク質によって包み込まれます。
イメージしやすくするために、コレステロールを宅配便の荷物、リボタンパクをコレステロールを梱包したダンボール箱、そんな風に考えておきましょう。
この荷物の配達先は、修復が必要な細胞のあるところですが、そこに届けるまでの道中はけっこう多難です。
というのも、途中で活性酸素がぶつかってくるからです。
なにしろコレステロールが入った荷物の進路は、実際の宅急便みたいに空いてる深夜の高速道路とは違って血管の中ですから、人によっては、あるいは体調によっては、活性酸素がうようよいるのです。
したがって、よけきれずぶつかってしまうこともしばしば。
実際の宅急便だったらそんなにぶつけてばかりいたら大変なことになりますが、コレステロールの入ったリボタンパクの段ボールは頻繁に活性酸素にぶつかります。
ぶつかるだけならいいのですが、そのほとんどが破損して荷物であるところのコレステロールは血液中にばらまかれます。
血液中にばらまかれたコレステロールは、掃除機の役割を果たす「マクロファージ」と呼ばれる物質が片付けます。
でも、その量が多すぎると前述のマクロファージという掃除機だけでは手が足りず、血管壁にある「平滑筋細胞」というものが助っ人として登場します。
二段構えで片づける機能があって素晴らしいとは思うのですが、ここに落とし穴があります。
というのも、片付け役のマクロファージと平滑筋細胞がコレステロールやリボタンパクを取り込む(片付ける)際に「アテローム」という物質が発生します。
このアテローム、またの名を「粥状隆起」と言って字のごとく、お粥上の物質。
そうなんです、この粥状隆起=アテロームが血管を塞ぐことで引き起こされるのが脳卒中や心筋梗塞というわけです。
つまり、脳卒中や心筋梗塞の原因は、コレステロールではなくアテローム(粥状隆起)なんです。
さらに言うなら、元々の元凶はコレステロールを梱包していたリボタンパクを破壊する活性酸素、この活性酸素こそが本当の悪玉なのです。
コレステロールが善玉・悪玉に分けられた訳
先述のように、コレステロールは一つです。
元々善玉コレステロール・悪玉コレステロールなどありません。
ではなぜ、あたかも善玉と悪玉と二種類あるように言われ始めたのでしょうか。
これには一応理由があります。
コレステロールは肝臓から必要な箇所に運ばれていくのは先述の通りですが、余ったり不要になったコレステロールは、特に劣化することもなく在庫置き場の肝臓に戻されます。
いずれも血中を通り、リボタンパクに梱包された状態で移動します。
必要な個所に送り込まれるのを行きなので「往路便」としましょう。すると不要になって回収されるのは帰りなので「復路便」ということになります。
事実、医学的にもこのような解釈で問題なく、往路を「LDL」、復路を「HDL」といいます。(DHLではありません…笑)
ここで、先ほどの記述の補足をするのですが、活性酸素と衝突して破損したリボタンパクの梱包には、実はコレステロール以外に「レシチン」という物質も同梱されています。
そして、このレシチンの働きは不要になったコレステロールを体外に排出することです。
レシチンが処理しきれなかった部分に関して、片付け役のマクロファージと平滑筋細胞が掃除をするのです。
ということは、レシチンが十分に足りていれば、マクロファージと平滑筋細胞の出番はなく、副産物のアテローム(粥状隆起)も発生しません。
コレステロールの誤解はこのアテローム(粥状隆起)によるところが大きいのですから、レシチンが多ければそんな誤解も生みません。
ここで、善玉と悪玉という考え方が出てきます。
実は先ほどのコレステロールの回収便であるところの復路便/HDLには十分なレシチンが含まれていて、活性酸素と衝突してリボタンパクが破損してもレシチンが処理しきれるので、アテローム(粥状隆起)も発生しません。
ところが、往路便/LDLには少量のレシチンしか含まれておらず、マクロファージと平滑筋細胞によりアテロームが発生します。
これをして、善玉と悪玉というようになったのです。
まとめ
善玉のコレステロール、悪玉のコレステロール、このような表現が誤りとまではいいませんが、コレステロールは元々一つ、ということは覚えておきたいものです。
そして、コレステロールは細胞の生まれ変わりに不可欠なもので、決して病気の元凶ではないということも併せて覚えておきましょう。
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