マンションは分譲or賃貸?賃貸に軍配が上がりそうな三つの理由
このところ、住宅ローンに関する記事を二記事ほど投稿しました。
こちらとこちら。
いずれもローンを組む際の注意点などを指摘したわけですが、都市部でマイホームを購入しようと思う人の多くは、一戸建てよりもマンションでしょう。
というのも、マンションの方がどちらかといえば値がこなれていて、一般に駅から近く、交通の便が良く買い物も便利だから。まぁ、あくまでも一般論ですが。
とはいえ、俗にペンシルハウスと言われる建売(土地が10坪台と狭小で主に3階建て)は、見ているとほとんど完売するようなので、都市部でも地べたを信仰する人は少なくないのかしれません。
ところが、その新築分譲マンション、このところかなり値が上がっているのです。
新築分譲マンションの価格は上昇している
ある信用できる調査によると、新築分譲マンションの価格は、2012年には1平方メートルあたり平均で645,000円でした。仮に70㎡の場合、概ね4,500万円。
ところが、2016年前半には1平方メートルあたり平均で817,000円と概ね26.7%も上昇しています。同じく70㎡の場合、概ね5,700万円。
その差額は1,200万円と、一般的なサラリーマンの年収2~3年分となっています。
価格が上がっているということは、それだけ新築分譲マンションが人気なのでしょうか?
これまたある信用できる調査によると、2016年のマンション供給戸数は前年同期より概ね16%減少しています。
一見、供給が減ったことで需要に追い付かなくなり、値が上がったのか?とも思えますが、実はそうとも言い切れない数字があります。
というのも、確かに供給戸数は減っているのですが、実は契約戸数も27%の大幅減になっているのです。
これは注目すべき数字ですよね。だって、もし本当に人気なら供給が減れば契約率は上がるはずですから。
特に人気といわれるタワーマンションにいたっては供給戸数は49%減と半減し、全体で見た場合の16%よりはるかに顕著な数字が出ています。
にもかかわらず、これが契約戸数になると、57%の減少となり、全体で見た場合の27%に対して、実に倍以上の数字。
これが何を意味するかというと、このところの新築分譲マンションの価格高騰は、人気による需給のバランスが崩れてそうなったというわけではないということ。
通常であれば、大幅な供給減は価格の高騰をもたらすだけではなく契約率も高まるはずなのに、契約率は供給減に輪をかけて落ち込んでいるのですから、これは不可解です。
供給が減って契約率が高ければ、これは人気による値上がりと言えますが、供給が減ってるのに契約率がさらに落ち込んでいるというのは、これは人気の表れとはとても言えません。
それでも新築分譲マンションが値上がりする理由はなんでしょう?
それは建築費の高騰です。
建築費はこの三年余りで30%から40%も値上がりしています。
これがマンションの価格高騰の原因であり、なんのことはなくただ原価が上がってそれが販売価格に転嫁されているにすぎません。
こういった理由から高騰している新築分譲マンション、さて、購入すべきなのでしょうか?
不動産としてのマンションの価値
ペンシルハウスはそれでも完売しているようだと先述しました。
都市部でも地べたを信仰する人は少なくないようだとも。
たしかに、よくよく考えてみれば、不動産の価値という観点で見た場合、マンションはほとんどが建物です。
一般に土地が三割に対して建物が七割、タワーマンションにいたっては土地に対して戸数が多いのでその比率は九割にも上ります。
建物はなんでもそうですが、経年により劣化します。
ということは、マンションの場合、価値の大半が建物なのだから、それはイコール不動産価値の低下を意味します。
マンションの場合、構造はRC・SRC等ですから、先日のペンシルハウなどより、構造的に強く普請も良く、耐用年数も圧倒的に長いのは事実ですが、何といっても、価値の大半が建物である以上、不動産としての価値は下がることはあっても上がることはほぼないということになります。
たしかに今はピカピカでも、ローンを払い終える30年後や35年後にどういった状態になっているか考えた際、不動産価値に想いを馳せてニンマリする人はいないでしょう。
自分の思い通りにはならないのがマンション
マンションはご存知の通り建物を全員で共有する区分所有です。
したがって、建物全般に関わる意思決定は、すべて区分所有者間の合意に基づいて為されます。
自分一人で意のままに何とでもなるのは専有部分、つまり壁の内側のみ、したがって壁紙を張り替えたりすることは自由に行えます。
さらに、キッチンやユニットバスの入れ替えも何ら問題ありません。構造壁でなければ間取りの変更も自由です。
ラーメン構造の場合など、全ての設備や間取りを刷新して、全面的にリノベーションする例も散見されます。
しかし、これが建物全体のこととなると、話は一気にややこしくなります。
たとえば老朽化して建て替えましょうなんてことになると、それはもう大変です。
それは当然といえば、当然ですよね。
建て替えなんてことになると、解体費・建築費・建て替え中の仮住まい・その引っ越し代・etc…
古くなって建て替えるわけですから、入居者だって新築当時から住んでいる人ばかりではなく、代替わりもしていれば、投資目的で購入した人もいる。
入居者それぞれ、資産も違えば収入も違う、考え方もライフスタイルも違う、そもそも建て替えを望んでいない人だっている。
こうした中で建て替えを敢行するには、入居者全体の5分の4の同意が必要です。(以前は入居者全ての同意が必要だった。また、自治体承認の再開発の場合、近年3分の2に緩和されている)
たとえば、適正な杭打ちを行わなかったため傾いた横浜のマンションの全棟建て替えの話はまだ比較的記憶に新しいですが、あのケースでさえ、入居者が合意に至るには紆余曲折がありました。
そういった特殊な事情でもなかなか賛成しない人がいる中で、単なる?老朽化による建て替えで賛成多数になる例は極めて稀です。
それだけ、個人の考えが反映されにくいというか、自身の思い通りにならないのがマンションなのです。
まとめ
さて、分譲マンションのデメリットばかり、三章に亘って並べ立ててきましたが、本記事の趣旨は新築分譲マンションを否定することではありません。
購入を検討する際に、あらゆる意味で賃貸ともう一度深く比較しましょうというのが旨です。
以前は賃貸マンションというと、設備が劣っていて、ファミリー向けの間取りが少ないというのが定番でした。
そのため、新築分譲マンションには確たるニーズがあったと言えるでしょう。
しかし、最近は分譲賃貸(主に投資用に購入して賃貸に出したり、自己使用で購入した人が転勤などで賃貸に出すなど)も増え、また、今後団塊の世代が購入したマンションが相続などにより賃貸に出されるケースも想定されることから、ファミリー向けの優良な賃貸は供給が増えると予想されます。
賃貸のメリットはなんといっても、ライフステージに合わせて物件を選べるということです。
この辺も加味して、賃貸の良さも再確認する必要はあるでしょう。その上で、新築分譲マンションの購入を再検討してみるのは賢明です。
熟考の末、やはり新築分譲マンションの購入に踏み切るのなら、それはそれで素晴らしい選択なので、なるべく良い条件の物件を見つけるよう努力してください。
その場合はやはり、こちらとこちら、さらにはこちらの記事も併せて参考にしていただけましたら幸いです。
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